初心に帰る (少し長文です)
18年来のお客様の犬、武蔵くんは、警察犬です。

この度、青森県警の委託警察犬として優勝を果たしました。
おめでとう!!武蔵くん。自分の事みたいに嬉しい。
なんと、、お母さんが指導手です。
そして、、、この優勝を機に、18年間夢だったと言ってくれた
「フレアー」の首輪を作らせていただきました。
私がまだ趣味で革をいじっていた頃、とあるショップさんが神戸の方のショー
に私の作品を出展したいという事で、一か月しかない日程で10種類の作品を作
ってくれという、かなり無茶な仕事のお話しをいただきました。
当時はほかの仕事をしていた私。そして運悪く引っ越しの最中で道具もスケッチ
ブックも何もかもが段ボールの中だし、全くショーなんて興味もなかったし、
クリスマスイヴだったし。
製作どころか仕事が忙しく、それよりまずは犬たちを新しい家に慣れさせたり生
活用品の片付けなどを早くしたかったので一度はお断りしました。
それでも何度も何度も連絡をいただき、押しの一手で私は製作することになった
のでした。
それからは徹夜の日々が続き、段ボールに入ったままの道具をごそごそと探しな
がら頭を掻きむしりながら、、何もないところから10種類の作品を産みました。
そして、ぎりぎり前日にボサボサ頭で大きな風呂敷に、出来立ての10個の作品を
つめこんで納品に行ったことを昨日のことのように思い出します。
その中に今でも定番として作り続けているティピーポーチとフリンジマフラーな
どもあったのです。1か月でこの世にないものを10個産むのは文字通りの「産み
の苦しみでした。何度も吐いたことを思い出します。
そして「一つでいいからいくらになっても構わないから目を引くようなものを!」
という先方のご要望があり、「めちゃくちゃ時間もかかるしお値段もお高くなる
ので、絶対に売れませんよ」と言ってお渡ししたのがこの「フレアー」でした。
何度書いてもフレアーパターンはワカメか昆布みたいになっちゃって、このデザ
インだけでも3日くらい書き続けたのを覚えています。
出動も「フレアー」で。
それが、、、20年以上の月日が流れ「フレアー」をこんなにかっこいい警察犬の
武蔵くんがつけてくれる日が来るなんて、その時は想像もしていませんでした。
このショーがきっかけで、全国のショップさんからお取引のオファーがありまし
たがやはりすべてお断りしたのも、まさか自分が犬具を作り続けるなんて微塵も
思っていなかったからなのです。
ハーレーに乗っていた私は、自分の愛車につけるバッグや自分の財布などを作った
り、健吾と杏樹という自分の犬に「ショップで売っていたかなり危なっかしい首輪
やリード」を使わせたくなかったという理由だけで革をいじっていただけなので、
仕事にする気は全くなかったのです。
でも、24年以上たった今、私はアトリエSASHAという屋号を持ち、全国の素晴ら
しい自慢のお客様たちに出会い、健吾と杏樹の間には三匹の可愛い子供が生まれ、
沢山の犬友達も出来ました。そしてその最愛の家族はみんな天国に行き、、、
若かった私もあと1年で還暦を迎えるのです。人生って面白い。
今でも私はあまり自覚がなく、たまに「あれ?首輪屋さんになってるの?私。」と
不思議に思うときもたびたびあるのですからとても変な人生です。覚悟が全くなか
ったために、苦労も沢山ありました。でも、もともとが頑固で偏屈な性格なので、
何とか首輪屋として生きております。
武蔵くんとの出会いで、しみじみつくづく、初心を思い出すことができました。
武蔵君のお母さんは本当に素敵な人です。手先が器用でステンドグラスでフェザーを
作ってくださったり、絵を描いてくださったり、、でも、男の子みたいに馬に乗った
り、イルカの調教も出来たり、空手道にも武ているのです。そうそう、、自衛隊にも
いたんだそうです。私をはるかに上回る不思議な人生かもしれません。
数多くのお客様との出会いやお付き合いは実にミラクルです。
私は「うちのお客さん」が、本当に大好きなんです。自慢のお客様なのです。
本当にすでに歴史といっても過言ではない年月がいつの間にか不思議に流れていった
けれど、こんなに長く続けてこられたのは、本当に「自慢のお客様」のおかげです。
アトリエSASHAを作ってくださったのは他ならぬ「自慢のお客様」なのです。
この場を借りて、SASHAを支え続けてくださって心からありがとうございます。
人生って本当に面白いですよ。来年の1月7日で25周年です。
本当に?って感じ。25年も私は毎日革をいじっていたのか。
手仕事で生きていけるのは本当に幸せです。
私もいつの間にか年をとりましたが、今ではすっかり片腕のリカちゃんと二人三脚で
スタート時と何一つ変わらず、ぶれずに同じやり方で作らせていただいています。
そして、出来たらあと10年は頑張りたい、なんて夢を抱きつつ体もいたわりつつ。。。
今でも気持ちは「ぽっとでのぺーぺー」な職人のはしくれは、生涯現役目指して精進
いたします。
ゆっくりペースな私にお客様が「20年でも30年でも待ちます」と言ってくださる
事も最近では多々あるのですが、、、その前にきっと死にます(笑)でも、死ぬまで
頑張りますよ。
実はこの5年はガタガタに体を壊し、今も毎日、治療を続けながらの製作ですが、
それでもあきらめようと思ったことはたったの一度もありません。
イベントなどの出店は私にはもう難しいかもしれませんが、
本筋のSASHAとNOSEBLEEDは私の子供のような存在なので製作に関してはこれからも
何一つ変えるつもりはありません。ご安心ください。
現在のアトリエの壁です。
来年も気を引き締めて、ゆっくりじっくり作っていきたいと思っております。
年末に武蔵君が色々なことを思い出させてくれて、さらに未来の夢も見させてくれました。
いつまでたっても、お客さま、お客さまわんこに教えていただくことばかりです。
年末にもまるで親戚のように全国から色々なものを送ってくださり、感激です。
2018年、ありがとうございました。
2019年もどうぞよろしくお願いいたします。
良いお年を!!
アトリエSASHA おのめぐみ&天使の犬たち&スタッフより。
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